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zoom RSS なぜ日本の女性は活躍できないのか

<<   作成日時 : 2016/11/24 23:13   >>

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 世界経済フォーラムが発表した社会進出における男女格差を示す「ジェンダーギャップ指数」(2016年)は、144か国中111位と過去最低を記録しました。女性活躍推進法を成立させ、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法なども欧米諸国に比べ遜色があるようには見えないのに、なぜ日本の女性はこんなにも活躍していないのか。濱口桂一郎氏(労働政策研究・研修機構主席統括研究員)の『働く女子の運命』(文春新書)はこうした問いかけから始まります。「ここには何か、法律の条文には現れていない、女性の活躍を阻害する要因が日本の社会に働いているに違いありません」と述べて、阻害要因を探す旅に出発します。

 序章「日本の女性はなぜ「活躍」できないのか」において、欧米社会と異なる日本独特の雇用システムにその原因があると示唆されます。欧米のジョブ型雇用システムと日本のメンバーシップ型雇用システムの違いを簡単に説明しながら、1970年代から1980年代に推進された男女平等政策の違いを浮き彫りにしていきます。

 欧米諸国の男女平等の出発点は男女同一労働同一賃金です。しかし、男女が違う仕事をしている(性別職務分離)ため格差は解消されません。そこで賃金が高く、スキルも高い男性の職域に女性を増やすために、さまざまな優遇措置を講じます(ポジティブアクションなど)。日本では雇用も賃金もジョブとは無関係ですから、同一労働同一賃金原則が存在しません。人の処遇がジョブではなくコースで分かれる日本の男女平等政策は、総合職と一般職という形の上では男女双方に開かれた「コースの平等」に向かいました。

 総合職という男性コースに入れてもらった少数派の女性たちは、専業主婦やパート主婦が銃後で守ってくれている男性たちと同じ土俵で、仕事も時間も空間も無制限というルールの下で競争しなければなりませんでした。一般職という女性コースは、パートタイマー、契約社員、派遣社員という形で非正規化が進行し、2003年には女性労働者に占める非正規労働者の割合が半分を超えることになります。 

 第1章「女子という身分」、第2章「女房子供を養う賃金」、第3章「日本型男女平等のねじれ」、第4章「均等世代から育休世代へ」と、濱口氏は日本的雇用システムの形成、確立、変容の過程を歴史的にたどりながら、働く女性の歩みを見ていきます。各章とも、それぞれの時代の働く女性をめぐる状況を映し出す発言や文章、時には判決を丹念に拾い上げ紹介していきます。

 本書の中で私が最も感心し、納得したのはワークライフバランスをめぐる論旨の展開です。

 日本型雇用システムは前線で戦う企業戦士たる成人男子正社員と、その家庭を銃後で守る専業主婦ないしパート主婦という組合せで、安定的な均衡解を獲得したとし、それを皮肉を込めて「日本的ワークライフバランス」と呼び、夫はワークに専念し、妻はライフに専念することによって、家庭としては見事にワークとライフのバランスが成り立っているというのです。つまり、夫と妻のワークライフ分業こそが究極のワークライフバランスである、と。

 次は、第一次ワークライフバランスと第二次ワークライフバランスの考え方です。
 労働時間規制について、労働時間の柔軟性(フレクシビリティ)ではなく硬直性(リジディティ)こそがワークライフバランスを保障するとして、これを第一次ワークライフバランスと呼んでいます。こうした意味でのワークライフバランス保障は、物理的な労働時間規制でないと意味がなく、それを超えたら残業代を払えというだけの賃金規制では不可能であるとしています。
 ヨーロッパでは物理的な上限規制がありますが、日本にはありません。日本の週40時間はそこから残業代の計算が始まる時間ですが、ヨーロッパの週48時間はそこで残業が終わる時間です。ヨーロッパの週休1日は休日出勤が許されない1日です。そして、日本には全くない規定として、毎日必ず11時間仕事から離れて過ごす時間を確保しなければならないのです。

 しかし、この出発点だけではワークライフバランスには十分ではないのです。育児や看護のための特別な状況に対応するためには、今度は逆に労働時間の柔軟性が必要になります(第二次ワークライフバランス)。そのための仕組みがヨーロッパでは整備されていますが、日本の育児・介護休業法の仕組みと大して変わらないといいます。

 濱口氏は、第一次ワークライフバランスがほとんど存在感がないまでに空洞化しているところに、そこだけ異様に完備された第二次ワークライフバランスを持ち込むと何が起こるか、と問い、総合職女性が「育休世代のジレンマ」に悩み、その周囲の人々が「もだえる職場」が、こうして生み出され続けることになる、と述べています。


 

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