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zoom RSS 労契法20条「不合理な相違の禁止」をめぐって

<<   作成日時 : 2017/02/13 22:01   >>

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 『季刊・労働者の権利』(Vol.318/2017.1)には、野田進氏(九州大学名誉教授)の「論考 非正規労働者の労働条件格差に関する法的対応ー「不合理な相違の禁止」を中心にー」が掲載されています。
 野田氏は、非正規労働者の労働条件格差に関する判例の動向として、ニヤクコーポレーション事件、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件を取り上げています。そして、あとの2つの事件の一審及び控訴審の4つの判決によって、「不合理な相違の禁止」の解釈法理が「格段に進展したように思われます」としています

 まず事件の概要を見ておきましょう。

■ニヤクコーポレーション事件
 被告会社は石油製品の運送会社で原告は有期パートのドライバーです。待遇格差がパート労働法旧8条1項(現9条)に違反するとして損害賠償を認容。(大分地判平成25年12月10日)福岡高裁で原告の勝訴的和解により解決。

■ハマキョウレックス事件
 被告会社は東証1部上場の運送会社、原告は配車ドライバー。無期契約労働者には、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当差額が支払われているのに、自分に未払いであるのは、労契法20条の「不合理な相違」に当たるとして支払い請求。差戻一審は通勤手当だけを「不合理な相違」と認め、差戻控訴審は無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当を「不合理な相違」と認容。(大津地彦根支判平成27年9月16日、大阪高判平成28年7月26日)

■長澤運輸事件
 原告らは貨物運送事業の運転手。定年退職後会社と有期労働契約を締結、正社員であった定年前1年と比べ、賃金が3割程度低下。主位的には、不合理な労働条件の定めは労契法20条違反により無効、無期契約労働者の就業規則が適用される地位にあることの確認、予備的に不法行為に基づく損害賠償請求。一審は原告らの主位的請求を認容、控訴審は原告らの請求を棄却。(東京地判平成28年5月13日、東京高判平成28年11月2日)

「期間の定めがあることにより…相違する」とは
 労契法20条に関する施行通達は、「期間の定めのあることを理由とした不合理な労働条件の相違」として、因果関係の存在を求めているが、ハマキョウレックス高裁判決以後の3つの判決では因果関係であることを否定する考え方を示しているとしています。

 長澤運輸事件地裁判決では、「相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることを要する趣旨であると解するのが相当であるが・・・」「他方において、このことを超えて、適用範囲において、期間の定めの有無を理由として労働条件の相違を設けた場合に限定して解すべき根拠は乏しい」、つまり関連していればよくて、理由としてまでは必要ないということであり、通達とは異なる立場であるとしています。

 長澤事件高裁判決では、定年後の継続雇用制度の対応によることには国民の総意がある、賃金が下がることが当たり前だとみんなが思っている、それが公知の事実であるというような言い方をしており、そのようにより優越的な関連がある場合には、関連性が否定されるとしています。

「不合理な相違の禁止」と均等・均衡
 「不合理な相違の禁止」と均衡取扱い、均等取扱いの関係について3つの考え方を示しています。
 第1には、格差是正の法的規制の強度に3段階があるという考え方です。規制レベルが、均衡取扱い→不合理な相違の禁止→均等取扱いの順に強くなるという考え方です。
 第2には、「不合理な相違の禁止」は上位概念であり、その中に、各対象と要件ごとに均衡取扱いと均等取扱いの両方の趣旨を含んでいるという考え方です。
 第3には、「不合理な相違の禁止」には独自の対象・要件・効果につき範疇があり、その中の一部について、均等取扱いと均衡取扱いが別範疇として存在するという考え方です。不合理であるかどうかということと均衡であるか、均等であるかということはレベルが違う話だと考えるわけです。

 野田氏は第3の見方を妥当とし、格差とは別範疇の「不合理な相違」の意味内容について考察を加えていきます。「不合理な相違」とは、差別取扱いや不利益取扱いとは異なり、より広い異別取扱いであり、「相違」の不合理性を評価するものである以上、全体として有利・不利を評価するのではなく、労働条件の「相違」の存在ごとに不合理性を判断する必要があるとします。相違は一つ一つ違うので、個別の労働条件の相違について一つ一つ検討していくことになるとしています。

 野田氏は、ハマキョウレックス事件一審が相違を十把ひとからげに判断しているのに対し、控訴審は「相違が同条に言う『不合理と認められるもの』に当たるか否かについて判断するにあたっては、個々の労働条件ごとに慎重に検討しなければならない」と判断しており、妥当であると述べています。

労契法20条違反の救済の問題
 労契法20条に関する通達は、「法20条により無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解される」としています。

 裁判所の判断は分かれています。
 長澤運輸事件の地裁判決は、労契法20条に違反する賃金は無効であり、正社員の賃金と同じものになるとするのに対し、ハマキョウレックス事件の高裁判決は反対の判断を示しています。つまり、労契法には、同法20条に違反した場合の効果として、補充的効力ないし直律的効力を認める同法12条や労基法13条に相当するような規定を設けていない。また、「同法20条により違法と判断された労働条件をどのように補充するかについては、労使間の個別的あるいは集団的な交渉に委ねられるべきもの」とも判示しているとしています。

 野田氏は、労働契約の合意の原則からすれば、労働条件の決定は可能な限り当事者に委ねるべきであり、裁判所が明文の規定がないのに労働条件の中身に介入するのは、できるだけ避けるべきであるという考え方は妥当であるとしています。

 

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