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zoom RSS リアルな労働基準監督官像

<<   作成日時 : 2018/01/03 16:06   >>

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 長時間労働の是正をはじめ働き方改革が大きな課題となっています。大きなきっかけとなったのは電通事件であり、その引き金を引いたのが、東京労働局の「かとく」と呼ばれる過重労働撲滅特別対策班を中心とした労働基準監督官による強制捜査でした。

 それ以降、労働基準監督署は社会の注目を浴びています。労働基準監督署はどんな組織で、労働基準監督官はどんな仕事をしているのか。
 そんな疑問に答えてくれるのが、元労働基準監督官の原論氏(社会保険労務士)が書いた『労基署は見ている。』(日経プレミアシリーズ)です。本書は、原氏の19年間に及ぶ労働基準監督官としての経験を踏まえた仕事ぶり、臨検監督や強制捜査を行った際の企業とのやり取りの様子など、リアルな労働基準監督官像が描かれており、非常に興味深い内容となっています。

 章を追って、内容を見ておきましょう。

第1章 労働基準監督官は予告なく訪問する
 労働基準監督官は、裁判所の許可なく立ち入る権限があり(臨検)、臨検を拒否したり、書類の提出の拒否、虚偽の陳述や虚偽の書類を提出したりすると、労働基準法違反として処罰の対象になります。
 さらに、監督官は、労働基準法令の違反に対しては、司法警察官としての職務を行います。裁判所から逮捕や強制捜査の許可を得て直接捜査を行い、検察官に事件を送致することができるのです。
 
 第1章には、老健施設への臨検監督のやり取りや、賃金未払の「申告」案件の臨検監督から2度の強制捜査(ガサ入れ)を経て、検察庁に送致するまでのやり取りが生々しく記されています。

第2章 職場の安全と健康を守るー労働基準監督官はこうしてつくられる
 労働基準監督官の数は約3000人。全国592万7000の事業所(平成26年経済センサス)を担当するとすれば、1人当たり約2000の事業所。10年かかってやっと一回りということになるとのこと。
 労働基準監督署の仕事は大きく分けて4つ。監督業務のほか、クレーンやエレベーター、ボイラなど機械類の検査業務を行う安全衛生業務、労災事故が発生した場合の休業補償や障害補償などを行う労災業務、そして所内の庶務業務。業務の担当官職が、監督業務は監督官、安全衛生業務は技官、労災業務は事務官と異なっており、お互いの連携もいまひとつという面もあるとのこと。

 本章では、「1メートルは一命取る」という安全衛生の標語の通りの事故事案が取り上げられ、「働く場におけるルールが適正に守られているかどうかを確認し、守られなかった場合に守るように指導すること、結果的に取り返しのつかないことになった場合にルール違反として処罰を求める手続きを行うこと」が監督署の仕事であることを強調しています。

第3章 労働基準監督官は一人親方
 労働基準行政では、「鉄は熱いうちに打て」という言葉があるそうです。事故が起きたら、相手が反省しているうちに処理を済ませてしまえという意味ですが、本章では捜査ができずに時期を逸してしまった事件が取り上げられています。

 何をしているのか他の監督官が知りえない「一人親方」のもとでは、捜査ができない監督官、監督で指摘ができない監督官、申告処理ができない監督官が生じてもやむを得ないとし、監督官としてのプライドを持って仕事をしてほしいと述べています。

第4章 監督官がやってきた!
 労働基準監督署は監督計画に基づき仕事を行います。監督計画は都道府県労働局の行政運営方針を踏まえ、労働局の方針は厚生労働省の行政運営方針を踏まえています。
 電通事件以後は、労働時間管理の新たなガイドラインの策定、本社に対する監督指導、企業名公表制度の拡大などが進められたほか、月間80時間を超える残業が疑われるすべての事業場を対象に監督が行われることになっています。
 都道府県労働局の行政運営方針は毎年4月に公表されています。労働基準行政について何を優先しているかを見れば、労働基準監督署の監督が何を重視して行われるかがわかるといいます。

 監督官にはノルマがあります。監督署の年間計画をもとに各月ごとに各監督官に計画が割り振られ、事業場のリストが渡されるということです。勤務評定の対象になるのが「違反率」と「実施率」。実施率を上げることしか考えていないと、臨検監督もただ行くだけとなってしまいます。
 そこで、違反は勧告するが、重い違反を書かずに帰ってくる監督官もいるそうです。チョロっと行って、チョロっと軽微な違反を書いて帰ってくるのを「チョロ監」というそうです。チョロ監では労基法15条違反を勧告するケースが多いとのこと。
 監督官から厳しい指摘を受けた場合、いやな奴だと思うか、リスクを見つけてくれてありがとうと思うか、その思考方法を変えるだけでも今後の会社が変わってくるだろうと指摘しています。

第5章 「ブラック企業」は常に見られている
 労働基準監督署には「労働基準行政情報システム」というものがあり、全国の監督署を専用回線で結び、情報を共有しているとのこと。監督結果情報も蓄積され、異動があってもデータを確認すれば、管内の企業の情報はすぐわかる仕組みになっているそうです。
 また、様々なタレコミ情報についても、情報の確かさに優先順位をつけ、臨検監督を行ったりするとのこと。本章では、高校生の娘がアルバイトをして帰宅時間が12時過ぎとなることも多いという、父親からの情報で臨検監督した事案の意外な結末が取り上げられています。

第6章 これからの労働基準監督署
 過重労働対策を怠ると、企業存亡の危機を招くことになりかねません。過重労働で健康障害を発症させる者が出ると、臨検監督が行われ、労働時間管理ができていなければ捜査が行われ、送検されることになります。送検事業場は、社名が一定期間公表されることになります。いわば、役所認定のブラック企業リストです。
 労災かくしは国を欺く行為であり、賃金不払い事件などと比べて、起訴率が高いといいます。しかも、表に現れない労災かくしは多数存在すると述べています。

 電通事件もその後の三菱電機事件も、労働者に「自己申告」という形で労働時間数を過少申告するよう指示していたことが明らかとなっています。このことは、会社が国を欺く行為、国に対してうそをつくということだと批判しています。そのうえで、本章では大手ゼネコンが労災かくしを行おうとし、大変痛い思いをした事案を取り上げています。

 
 

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