パートと被用者保険、四分の三基準による適用除外
川崎航史郎氏(龍谷大学講師)の論文「短時間労働者の健康保険・厚生年金保険へ加入する権利―四分の三基準に基づく適用除外の違法性」(『労働法律旬報』No.1833.2015.2.10)を読みました。
現行のパート労働者の資格要件の基となっている厚生省保険課長等からの都道府県保険課(部)長宛内翰(1980年6月6日)(以下、「80年内翰」という。)の問題点が広く取り上げられており、パート労働者と被用者保険の関係を理解する上で大変参考になる論文です。
川崎氏は、「80年内翰」が出るまでの歴史的経緯をたどっています。1956年の照会に対する厚生省保険局回答、1971年の労働省婦人少年局婦人労働課「女子パートタイマーの労務管理に関する問答集」、1978年の社会保険庁健康保険課「健康保険の実務(第7版)」を分析する中で、「常時使用関係にある」「短時間労働者は原則適用」とされていたとしています。
ところが、「80年内翰」により、法定の雇用期間要件を満たす労働者であっても、通常の労働者の四分の三未満の労働時間・労働日数のパート労働者を被用者保険から適用除外することになったといいます。
川崎氏は、日本の社会保険制度は、まず被用者保険適用対象を確定し、その後、被用者保険非加入者を対象に住民保険(国保・国年)を適用するとします。
その上で、ある者にどの保険が適用されるかの判断基準として次の5つの基準を示しています。
「適用事業所に使用される労働者であるか否かの法定基準」(第一基準)Yes→「雇用期間による適用除外という法定基準」(第二基準)Yes→「労働時間、労働日数という行政内部基準(内翰)」(第三基準)Yes→被用者保険被保険者という流れがひとつです。
もうひとつは、第一基準No又は第二基準No又は第三基準No→「扶養者が存在しかつ賃金が被扶養者所得基準以下という法律委任基準(いわゆる130万円基準)」(第四基準)No→住民保険被保険者(「どの住民保険に適用され保険料を賦課されるかという法定基準」(第五基準))という流れです。第四基準Yes→被扶養者となります。
氏は、各基準の「認知度」は異なっており、適用に関する「誤解」も生じているとして、被扶養者認定基準である年収130万円がパート労働者の被用者保険適用基準である、との誤解を例示しています。
川崎氏は、四分の三基準の「統一的基準」としての機能不全を指摘しています。
「80年内翰」は基準を1から3まで示していますが、「総合的に勘案して」、「おおむね」、「原則として」、「個々具体的事例に即して判断すべき」など、具体的でないだけでなく、あいまいで裁量の余地が大きすぎるとしています。
その結果、氏は、適用・非適用を実質的に判断するのは事業主になっているとします。事業主がパート労働者の被保険者資格取得届を出せば、保険者(年金事務所)は「80年内翰」を理由に拒否することは不可能であるとしています。さらに、届出用紙に「労働時間」や「労働日数」の記載項目もないのですから、当該労働者がパート労働者であるかどうかを保険者は把握できないといいます。

2012年の年金機能強化法により被用者保険の改正がなされ、適用拡大が行われました。2016年10月から施行されます。そこで示された適用基準には「総合的に勘案」や「おおむね」や「個々具体的事例」といったあいまいな文言はありません。
現行のパート労働者の資格要件の基となっている厚生省保険課長等からの都道府県保険課(部)長宛内翰(1980年6月6日)(以下、「80年内翰」という。)の問題点が広く取り上げられており、パート労働者と被用者保険の関係を理解する上で大変参考になる論文です。
川崎氏は、「80年内翰」が出るまでの歴史的経緯をたどっています。1956年の照会に対する厚生省保険局回答、1971年の労働省婦人少年局婦人労働課「女子パートタイマーの労務管理に関する問答集」、1978年の社会保険庁健康保険課「健康保険の実務(第7版)」を分析する中で、「常時使用関係にある」「短時間労働者は原則適用」とされていたとしています。
ところが、「80年内翰」により、法定の雇用期間要件を満たす労働者であっても、通常の労働者の四分の三未満の労働時間・労働日数のパート労働者を被用者保険から適用除外することになったといいます。
川崎氏は、日本の社会保険制度は、まず被用者保険適用対象を確定し、その後、被用者保険非加入者を対象に住民保険(国保・国年)を適用するとします。
その上で、ある者にどの保険が適用されるかの判断基準として次の5つの基準を示しています。
「適用事業所に使用される労働者であるか否かの法定基準」(第一基準)Yes→「雇用期間による適用除外という法定基準」(第二基準)Yes→「労働時間、労働日数という行政内部基準(内翰)」(第三基準)Yes→被用者保険被保険者という流れがひとつです。
もうひとつは、第一基準No又は第二基準No又は第三基準No→「扶養者が存在しかつ賃金が被扶養者所得基準以下という法律委任基準(いわゆる130万円基準)」(第四基準)No→住民保険被保険者(「どの住民保険に適用され保険料を賦課されるかという法定基準」(第五基準))という流れです。第四基準Yes→被扶養者となります。
氏は、各基準の「認知度」は異なっており、適用に関する「誤解」も生じているとして、被扶養者認定基準である年収130万円がパート労働者の被用者保険適用基準である、との誤解を例示しています。
川崎氏は、四分の三基準の「統一的基準」としての機能不全を指摘しています。
「80年内翰」は基準を1から3まで示していますが、「総合的に勘案して」、「おおむね」、「原則として」、「個々具体的事例に即して判断すべき」など、具体的でないだけでなく、あいまいで裁量の余地が大きすぎるとしています。
その結果、氏は、適用・非適用を実質的に判断するのは事業主になっているとします。事業主がパート労働者の被保険者資格取得届を出せば、保険者(年金事務所)は「80年内翰」を理由に拒否することは不可能であるとしています。さらに、届出用紙に「労働時間」や「労働日数」の記載項目もないのですから、当該労働者がパート労働者であるかどうかを保険者は把握できないといいます。

2012年の年金機能強化法により被用者保険の改正がなされ、適用拡大が行われました。2016年10月から施行されます。そこで示された適用基準には「総合的に勘案」や「おおむね」や「個々具体的事例」といったあいまいな文言はありません。
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